①あさりちゃん
あさりちゃんは、基本的には"家族漫画"である。
家族の日常を題材に、1話完結で進めている。
なお作者の室山まゆみはペンネームであり、姉妹(室山まゆみ/まりこ)での共著である。
「あさりちゃん」は、サザエさん方式(時代は変わるが年齢は変わらない)を採用しており、
主人公のあさりは四年生のまま。
姉のタタミは六年生のまま。歳を取らない。
私は「あさりちゃん」が好きだ。
決して私はロリコンではない。
私が生まれて初めてハマった漫画だからだ。
いや、私が初めて"漫画"というものを認識した作品だからだ。
皆さんにもあるでしょう?
初めて"漫画"だと思って読んだ漫画!
全てのベースになる漫画。
それが私は「あさりちゃん」なのだ。
正確にはあさりちゃん57巻だ。
そう。私はあさりちゃんを初期から追い掛けてはいない。そもそも生まれていない。
途中から入っていった組だ。
小学校低学年の頃から読み始めた。
いつの間にか、あさりちゃんの歳を追い越す。
そして他の漫画を楽しみながらも、あさりちゃんだけは義務の様に買い続けた。
思春期を迎えて本をレジに持っていくことに恥じらいを感じる【中学生男子あさりちゃんファンあるある】も経験した。
気が付けば大人になり、あさりちゃんは四年生のまま完結した。
あさりちゃんと共に生きていたといっても過言ではない。
では早速振り返ってみよう。
※独断と偏見があります。あくまで一個人としての感想です。
・1巻~15巻【家庭内暴力爆発期】
あさり:弱虫
タタミ:意地悪
母:狂暴な制裁者
この頃のあさりちゃんは、ギャグ漫画の側面が強かった。
連載初期は目立たないと生き残れない。結果、弱いあさりと強いタタミを設置しわかりやすい構図になっている。
そしてその二人を全て力任せに制圧するパワフルママ、さんごを爆発させる展開が多かった。
姉妹ならではの家庭での理不尽。
子どもならではのズルさ。
大人に対するあこがれ。
そして現代の子どもが読んでも違和感の少ないストーリー。
瞬く間に多くの子どもの支持を得て、すぐにアニメ化にまで至った。
何よりも初期といえば、【大長編】が多く収録されているのも特徴の1つだ。
浜野一家が家庭を飛び出して、世界を舞台に大暴れしている。
特に13巻の「あさりの英雄伝説」は生々しくて好きだ。
お金持ちになりたい。
好きなことを好きなだけやりたい。
そんな欲望を堂々と炸裂させている。主人公のあさりですら、その欲に堂々と従っている。
良いやつがいないのだ(猛爆)。それが逆に清々しい。
他の大長編でも、普段家庭内で溜めに溜めていた欲望が大爆発している。是非読んでほしい。
・16巻~30巻【低迷期】
この頃のあさりちゃんはアニメも終わり、次の方向性を模索していた。
作者も50巻の巻末でも描いている通り、マンネリ化にぶつかりモチベーションも下がっていた。
後半からだんだんあさりが強くなって、家庭から飛び出すようになってくる。
話し方も、語尾に「~」が着くことが増え、あさりの人格が少しずつ変わってくる。
ストーリーも作者の好きなホラーものが出始め、物語に幅がでてくるようになった。
特に19巻の「あさりの赤い靴」では幽霊が主役になりあさりを惑わす。
・31巻~45巻【拡大期】
今まで家庭内での話が主だったのが、学校に生活圏が拡がりそこでの人間関係が出てくる。
今まではタタミの親友あや子、あさりのライバルいばら位しか居なかったのが大幅に増えることになる。
担任:かばちゃん
タタミの担任:成瀬
校長:うつぼ
幼なじみ:組長
クラスメート多数
家庭でも新キャラクター「うにょ」が40巻で登場(38巻の扉絵にもいるが、、、)し、「にょん」としか吠えることのできないバカ犬として定着。
ストーリーの幅が大きく拡がり、それに従ってあさりの人格も変わってくる。
家ではタタミに押さえつけられているが、外に出れば悪ガキになり大暴れ。遅刻魔で大食い、喧嘩が多く男勝り。
初期のあさりとはかけ離れた存在となった。
作者も「どろろんぱっ」など他作品の連載も始め、それがあさりちゃんの気分転換になっているように感じる。
・46巻~60巻【黄金期】
私はこの頃が一番好きだ。
作者は油が乗っていて勢いがあり、キャラクターは好き勝手に暴れまわる。
ストーリーも家庭もの・学校もの・ホラー・感動ものと幅広く、人気作も多々生まれている。
この頃から「作者のぺえじ」が始まり、「読者の質問コーナー」や「まゆみちゃん簡単クッキング」など、これが楽しみで読むことも多かった。
またこの頃から不定期で「ハイスクールあさりちゃん」が始まり、人気になる。
タタミにスポットを当てた回もあり、
タタミと同性愛者(47巻)
タタミと不登校生(57巻)
など、独特の組み合わせで面白かった。
他にもあさりとタタミが"死"と向き合う話「マイフレンド フォーエバー」は必見。
「友達になりたかったんだろうね」
「"かった"じゃなくて、もうあさちゃん友達だよ」
「……そだね」
今までにない読後感がある回だ。
・61巻~80巻【逆戻り期】
連載紙が「小学◯年生」になったことで、低年齢向けの話が増え、その結果あさりもタタミも幼くなる。
単行本にはこの頃から始めに「登場人物紹介マンガ」が始まり、最終巻まで続くことになる。
またタタミが小学2年生、あさりが幼稚園年長の頃を描きタタミにスポットを当てた「タタミちゃん」が始まる。
・81巻~100巻【ゴールへ燃焼期】
50巻の頃では「100巻は無理」と描いていたが、100巻が近付くに連れて意気込んでいるのがわかる。
ホラーものの傑作が多く、
「30人目の呪い」95巻
「終わりのない怪談」98巻
はトラウマものだ。
作者が事故や病気になっても、アシスタントを雇ったり一人で描いたりしてなんとか進めていた。
漫画のネタも堂々と読者から募っていて、「読者からのネタをどう料理するのかもプロの仕事」と主張。
アイデアは枯渇。
肉体的にもボロボロ。
そんな状態でも最後まで描ききった。すごいことだ。
"マンガの最終回問題"は永遠のテーマだが、作者も読者も納得のいく形で終われたのだと思う。
連載後、間もなく「5年2組あさりちゃん」として復活したのには笑った。
あさりちゃんのすごいところは、
30年以上連載していて、読者を置いてけぼりにしている話が極端に少ないところだ。
30年子どもを描いていたら、子どもに対する認識のズレなんて出て来て当然である。
なのにあさりちゃんにはそれがない。だから長く親しまれているんだと思う。
サンタは実在しないと描いて(クレームが着てもなお!)子どもの夢を奪ったりもしたが、、、。
それと巻数が進むに連れてだんだんと、
弱いあさり↔強いタタミ
から、
真っ直ぐなあさり↔ひねくれたタタミ
に変わっている。そこが面白い。
1つのテーマに対して真っ直ぐな意見をあさりが持ち、別の視点でタタミが指摘する。それを受けたあさりの言動に、周りが振り回されていくのが痛快だ。
あれ?
これってもしかして、
ドラえもんじゃね??
(猛爆)